介護の経済負担はどれくらい?

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介護の現場に入って

FPを10年近くやっていると、医療やガンに関する情報は、保険会社や仲間からかなり入ってくるのですが、介護についてはほとんど情報がありませんでした。わかっているのは「認定方法はこう」「公的な補助体系はこう」といった表面的なことばかりです。

そこで、肌感覚で介護を理解したいと考え、思い切って介護の世界に飛び込んでみました。実際に現場に入ると、思っていたのとはまるで違う現実を目の当たりにすることが出来ました。見ると聞くとは大違いとは、まさにこのことでした!

介護施設の費用

介護の現場には多くの深刻な問題がありますが、そのひとつは、介護認定者を抱える家族の経済的問題です。

介護が必要な方のための施設にどれくらいの費用がかかるかご存じでしょうか?

施設の選択によって経済的負担がかなり異なりますが、月額で、ざっと3万円・10万円・30万円くらいの3つに分けられます。

(1)有料老人ホーム
民間の老人ホームです。優れた設備とサービス、医師・看護師常設などを兼ね備えた素晴らしい施設もあり、なかには一流ホテル並みの所もあります。入居一時金は500~1,500万円、月々費用は20~40万円です。5年間の必要資金は1,000万円~5,000万円で、平均で3,000万円位です。

「5年間」という期間にも注意が必要です。介護は、一旦始まったらいつまで続くか分からないリスクです。仮に、「10年間」になれば月々費用が2倍かかり、負担がのしかかります。

私の知り合いで、寝たきりのお母様を40年間介護された方がいらっしゃいますが、40年間の苦労を表現する言葉がありません。

(2)特別養護老人ホーム(特養)
公的な老人ホームです。ここに入ることが出来れば、経済的負担は月に3~4万円ですみます。しかし、特養は入居待ちの待機者が現状の受け入れ定員と同じくらいいて、簡単には入居できません。4~5年待ちというケースもあります。

要介護度4ないし5であれば、最も待機者の多い東京であっても比較的早めに入居が可能です。

しかし、要介護2ないし3の場合は、長く待機することになります。結果、充分なサービスが受けられず、かといって有料老人ホームに入所するだけの資金もない、という困った状態になるケースもあります。

(3)デイサービスセンター
自宅から通い、入浴や食事等の介護・支援を受けられるサービスです。特養の待機待ちのような方に注目されている新しい施設です。名前はデイサービスですが、宿泊が可能な施設もあります。経済的負担は、利用内容にもよりますが月10万円程度です。

これらの施設の毎月の経済的負担(概算)を表にすると次のようになります。

施設タイプ 1ヵ月 5年間合計 10年間合計
特別養護老人ホーム(*1) 4 240 480
デイサービス(*2) 10 600 1,200
有料老人ホーム(*3) 30 2,800 4,600

※単位万円。有料老人ホームの入居一時金を1,000万円と仮定。
(*1)施設利用料(介護保険自己負担分)、多床室住居費
(*2)ショートステイ併用のサービス利用(月の半分程度と想定)
  施設利用料およびヘルパー利用料(介護保険自己負担分)、ショートステイ費用
(*3)中間的なタイプの有料老人ホームの費用、入居一時金を1,000万円と仮定

これらの費用を貯蓄と年金で賄うことができればいいのですが、そうでなければ何らかの準備が必要です。

介護費用への備え

対策としては、やはり民間の介護保険や介護付き終身保険に入るということになります。介護保険にもいろいろタイプがありますが、要介護2あるいは3以上になると一生涯毎月一定額を払い続けてくれるものがあります。

介護保険のニーズは、今後ますます高まってくると思います。

ところで、介護の現場にいると、「なぜいま?」と言うタイミングで、突然、施設を離れ、比較的経済負担の少ない施設に転居されるご利用者がいらっしゃいます。いろんな理由もあるでしょうが、経済的な理由が第一のようです。

経済的負担を軽減するために、自分を育ててくれた両親を別の施設に移すことは誰も望むことではありません。このようにならないためにも、介護保険の役割は非常に大きいのではないかと思います。

介護は、一旦始まるといつ終わるとも知れません。エンドレスの精神的負担と経済的負担を家族に強いる、極めて過酷な状況となります。公的介護保険があるから安心というのは、とんでもない誤解です。ある意味で介護保険は医療保険やガン保険と共に「マストの保険」といえそうです。