時間治療のゆくえ

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「時間治療」とは?

最近、矢継ぎ早やに医療関係の新たな動きが目立ってきています。

例えば、ほぼ全額が自己負担になっている抗がん剤について、健康保険の適用を広げることや、重い病気にかかった場合に、未承認の医薬品をより使いやすくするしくみなどが、厚生労働省で検討されています。

これらは嬉しいニュースであり、早い実現が望まれるところですが、今日はそれとは別に、『時間治療』についてご紹介致します。

『時間治療』とは、全く同じ薬でもそれを投与する時間によって、驚くほど効果に差があるという新しい考え方で、先日NHKの番組でも取り上げられました。

手がつけられない程の大きさだったガンが、『時間治療』によって小さくなり、手術が可能になって、健康を取り戻した実例があります。

さらに、神経性リュウマチの痛みが、『時間治療』によってウソのように消えた実例も紹介されていました。

体内時計で制御される生体のリズム

まず、人体を形成する約60兆個の細胞には体内時計があり、それらは脳にある親時計によって毎日リセットされています。

人体のリズムは何千年もかかって形成されているので、少々昼夜逆転の夜型生活を経験したくらいでは、簡単に変わりません。 体内時計によってホルモンの分泌などが制御されており、毎日一定のリズムで薬に対する抵抗力や吸収力も変化している様です。

また最近では、抗がん剤を分解する力は昼間よりも夜間に強くなることが分ってきました。抗がん剤に対する抵抗力は夜9時頃に最大になり、朝には下がります。

抗がん剤はガン細胞だけでなく正常な細胞まで破壊し、頭髪も抜ける副作用があるので、多量の投与は困難とされてきましたが、『時間治療』の研究が進み、ガン患者に夜間に大量の抗がん剤を投与することが可能になってきました。

ある患者さんは、大腸ガンから転移した肝臓ガンが大き過ぎて手術不能だったのですが、たった2カ月の時間治療でガンが大幅に縮小して、健康を取り戻しました。

この方は、体内時計の働きによって夜間に強まった抗がん剤の分解能力で、大量の抗がん剤と闘い、打ち勝ったのです。

また、あるリュウマチ患者の場合、朝に薬を飲むのと夕方飲むのとでは身体に対する効果が全然違いました。これまで普通に朝飲んでいた薬を、夕方に変えただけで、全然効果が変わり、痛みが軽減されました。

日本における「時間治療」のゆくえは?

薬剤の夜間投与は、患者にも看護する側にも負担があります。 フランスでは、時間治療のために開発された『クロノポンプ』という器具を使い、適切な時間に自動的に投与が可能になっています。さらに、これは自宅でも手軽に使えるので、普及が広がり、これまでに約3,000人が受けています。

入院も不要で、余分な費用もかからず、副作用も少なくガン治療が出来ているのです。

日本では、時間治療はまだ一部の大学病院での研究段階ですが、ガンだけでなく、高血圧や喘息、リュウマチなどの治療に効果が期待されています。 厚生労働省や製薬会社の協力が得られれば、時間治療は飛躍的に発展する、と番組のコメンテーターが話していました。

注) 本コラムの記事は、最近の医療動向として「時間治療」をご紹介したものです。 実際の治療内容や効果、医学的な見解については、専門機関や専門医師にご確認ください。